棚山 氷の沢と宮標石

 2週間前の御料局三角点ツアーの続編としての宮標石探しと、凍った棚山沢遡行。
【到達点】棚山瀬戸岩
【沢  名】棚山沢(仮称)(谷川?) (豊川支流海老川水系谷川上流鍵掛沢右俣)
【山 域】奥三河(設楽山地) 天竜奥三河国定公園
【所在地】愛知県新城市(2005年9月30日までは南設楽郡鳳来町)
【山行日】2006年2月11日(土曜日)
【行 程】川売奥から
  豊川 ==(R257、44.9km)== 棚山林道ゲート前 ---- 登山道合流 ---- 小沢横断地点 ---- 九ノ一 ---- 二○ --
  9:15                     10:31 - 10:37         11:04           11:05            11:09       11:19
  -- 岩上見出 ---- 一九 ---- 一八 ---- 一七 ---- 一六 ---- 一五(界支二)---- 一五支一 --
      11:26       11:30      11:32     11:34     11:34      11:39              11:45
  -- 一五ピーク ---- 自然石×印 ---- 界一三 ---- 界一二 ---- 東屋 ---- 標石 ---- 瀬戸岩分岐 --
        11:47           11:51        12:04       12:06       12:17     12:20      12:21
  -- 瀬戸岩 ---- 瀬戸岩最高点 ---- 瀬戸岩(昼食)---- 瀬戸岩分岐 ---- 小沢横断地点 ---- 夫婦滝 --
     12:24                          12:36-12:49        12:50            13:06           -13:16
  -- 林道ゲート前 ==(25.7km)== 県民の森 ==(40.6km)== 豊川(合計走行距離:111.2km)
     13:20-13:24              14:06-14:44            15:51
【所要時間】2時間43分(含休憩)
【人数】1人(単独)
【標高差】約190m
【天 候】曇(晴れ間あり)
     6℃(自宅出発時)、4℃(10:31)、15℃?(瀬戸岩)、7℃(下山時)、10℃(帰宅時)
     (2月11日12時新城の気象庁データ:気温10.8℃、風速4m/s、風向:西北西)
【使用地形図】1:25,000 海老(えび) 平成13年修正測量
【スタイル】SALOMON皮登山靴(登りで使用)、ミズノ運動靴(下りで使用)、PHENIX化繊ズボン、
      綿100%Tシャツ、混毛長袖シャツ、厚手靴下(革靴使用時のみ)+薄手靴下、
      フリース(TARAS BOULBA POLARTEC ポリエステル100%)(途中まで)、ZEROPOINTザック、
      腕時計(CASIO TWIN SENSOR)、デジタルカメラ:MINOLTA DiMAGE7(首に下げて歩く)
【飲 料】キリン生茶900ml(約250ml飲む)
 2週間前に棚山へ行った時、沢が凍っていたのにまず驚いた。奥三河のこんな低山でも凍るのだと。ちょっと氷の上を歩いてみたくなった。また、宮標石があることを示しているような気になる赤ペンキの矢印もあった。その矢印の奥にも行きたい。地形図を見ると、矢印があった先には棚山の尾根がある。このなだらかな尾根伝いに歩いてもみたいとは、以前から思っていたことでもあるし、宮標石もありそうな気がする。登山道にあった赤矢印はこの尾根へのルートを示しているのではないかとも思いました。

 前日までの仕事疲れを残さないために目覚ましもかけずに寝る。雨だったら即中止にしようなどと出発前にそんなに乗り気でないのは単独行のときはいつものこと。しかし起きると多少寒さを感じるものの、中止にするほどの理由は何も見つからない。朝食のパンをかじり、淡々と準備を進める。

 2週間前と比べると、寒さもそれほどでもなくなってきた。とは言うものの、そんなに暖かくなってきたわけでもない。まだ沢に氷はあるだろうか。無くても宮標石探索という目的があるからモチベーションは保てる。

 ローソンに寄って、新城からR257で海老へ。そして交差点を直進して川売へ。林道を行くと、削り取った法面には2週間前と変わらないように見える氷が何箇所かから垂れている。ゲートまで行くと他に車は1台。氷を見たので、アイスクライミングできる装備で行くことを決心する。アイスバイル2本、モノポイントアイゼン、径8mm×20mザイル、ハーネス、ヘルメット、カラビナ、シュリンゲ、アセンダーなどを持っていく。靴はアイスクライミングできる革靴を最初から履いていく。出発前にローソンで買った「手巻寿司ねぎとろ」(160円)を食べる。

 登山道に入ってわずかなところにある砂防堤の脇から沢に入る。2週間前には沢の音がしていた記憶があまりないが、今日は沢音が大きいような気がする。どうやら2週間前ほどの氷はないようだ。



砂防堤のすぐ横から沢に下りる

 沢に入ると、水は流れているが、氷も張っている。アイゼンは履かなくても乾いた石の上を辿っていける。大きくはないが滝も出てくる。凍ってはいるが、水も流れている。アイスクライミングできるほどではないと思える。

 



小滝と氷面

 メインの並列に垂れる滝に着く。名前をつけるなら「夫婦滝」と言ったところか(後日、『マイカー登山ベスト30東海版』(七賢出版)や、『分県登山ガイド22 愛知県の山』(山と溪谷社)を見たら、既に「夫婦滝」と紹介されていました)。『増補改訂版 奥三河の滝 10万年の旅』(風媒社)には「棚山の滝」として写真とともに紹介されていて、松脂岩(しょうしがん)でできていると書かれています。『鳳来町誌 鳳来寺山編』によると、松脂岩は学名からピッチストーンとも呼ばれ、鳳来寺山から棚山、宇連山にかけては日本の松脂岩の代表的産地なのだそうで、水分を10%前後も含むといい、同じような成分で水分が1%未満のものを黒曜石というのだそうです。滝の右はほぼ凍っているが水も滴っている。左はかなり氷が融けて水がむき出しの部分が多い。滝つぼは周辺しか凍っていない。アイスクライミングはちょっと無理っぽい。あきらめるのに時間はかからないほどである。写真だけ撮って出発する。



夫婦滝全景

 



夫婦滝の部分拡大

 すぐ横には東海自然歩道の道標のある旧道があり、それを辿る。そして岩が累積している感じの滝状のすぐ上で登山道に合流する。結局、沢では靴を水に濡らした程度で、氷を避けてアイゼンをつけず登山靴のまま登ることができた。



旧道は落ち着いた雰囲気がある



旧道にはそれほど古くは見えない道標もある

 登山道をわずかに登ると2週間前に赤い矢印と「界九」の宮標石を見て、少し中に入ってみたところである。すぐ左には沢を横断する小さな橋がある。地形図を見るとこの沢は740m標高点の南に上がるなだらかな沢である。つまりこの沢の右を行けば740m標高点に行ける。それは出発前に考えていたベストルートである。沢登りをどこまでするかによって740m地点へ直接登るか、帰りに通るか不透明だったことである。これはいいと迷わず赤矢印方面へ入る。

 少し行くと沢沿いに新しめの「+」印のコンクリート標石があり、赤ペンキが塗ってあった。プラスチックには「九ノ一」と書かれていた。ここで登山道を登ってくる登山者グループの声が聞こえた。まだ登山道のすぐ近くなのだ。先に進むと沢に降りることになる。なだらかで水に濡れることもない。しかしその先は水の流れの中。この沢は日当たりが良いのか、全く凍っていない。境界は沢に沿ってあるのかもしれないが、濡れるのを避け、ここからは沢沿いをあきらめ、右の斜面を尾根を目指して登ることにする。藪は薄く苦労はしない。



「九ノ一」標石

 小尾根上に着くと小さなピークがあるが何もなかった。近くには林業用だろうか、古いワイヤーがまるめてあった。現在地は740mピークから南東に延びている小尾根であることを地図とコンパスで確認して北西に向かう。濃くないが、踏み跡はある。



小尾根上は笹も薄く歩きやすい



小尾根上に放置されていたワイヤー

 しばらく進むとプラスチックのL型の柱に「二○」とあり、錆びた板金も掛かっていた。しかし標石はない。少し先にもプラスチックの柱と板金。板金には「境界見出標 名古屋営林局」とはっきり読めた。



タヌキのため糞?

 さらに登ると岩場がある。左から巻いても行けそうだが、岩の上に何かあるかもしれないと、岩を登る。どうやら2週間前に、岩の上の御料局三角点を見て、さらに他の岩にも登って探したりしていたら、岩の上を見る癖がついてしまったようだ。

 ところが、岩の上にちゃんとプラスチックの標柱、木製の標柱と、岩に「×」印の刻印があった。さらに小尾根を進むと「一九」の表示と足元にはついに宮標石を見つける。上面に「×」印で角切りのある標石で側面には「界」の字が読めるがそれより下は地面に埋まっていて読めない。



岩の割れ目に刺さっていた2本 近くの岩には「×」印がかろうじて読み取れた

 「一九」の15mほど先には、「一八」があるが標石は無い。ここから左に折れ、「一七」を見るがこれも標石は見当たらない。しかしここから10mほど先の「一六」には苔むした宮標石があった。ここが740m標高点のピークだと思われる。



苔むした宮標石

 左へ急斜面を下り、鞍部には「一五」の表示と「界支二」と読める宮標石があった。「宮」の図案化された文字もはっきりわかる。次が「一五支一」で、宮標石は「界一五ノ」と読め、以下は地中で不明。



「界支二」宮標石

 次の小ピークにはなぜかまた「一五」の表示。宮標石あり。先ほどのは「一五支二」だったのでしょう。また小ピークがあり、ここは岩になっていて、その岩に小さな「×」(線長5cm)が刻印されていた。ここか、その前の「一五」小ピークが『東三河の山 宇連山・棚山・鳳来寺山』(東三河山ぽ会)で紹介されている棚山北尾根との分岐になるのでしょう。ここで方向を左斜め前にする。岩がいくつも続く。右側は絶壁になっている。風もある。岩に出ると眼下にブッポーウォールが見える。



「界一五」宮標石の図案化された「宮」文字



自然石の「×」刻印



岩がいくつか続く尾根

 そのうち笹藪となり、踏み跡も隠れていたりして多少難儀する。でも笹はそれほど高くなく、だいたい腰あたりで高くても胸まであるかないか程度。踏み跡は部分的に薄くなったり、不明瞭になるが、尾根を外さないように進む。残雪も見かける。そんな笹の中で、「界一三」、「界一二」の宮標石を見る。これらには赤ペンキの跡は無かった。現在の棚山国有林の境界から外れているためと思われる。





赤ペンキの塗られていない「界一三」宮標石は笹原の中



笹原

 意外に長い笹道をどんどん進む。下りになり、踏み跡は尾根から外れて左へ行く。その踏み跡に沿っていくと、登山道に出た。副川寝観音ルート(土砂崩れ通行止め看板あり)分岐と東屋の間であった。大満足の成果。氷の滝も見れたし、宮標石も見つけた。あとは瀬戸岩で昼食をとって帰ることにする。



右上から下ってきてここで登山道に出ました



登山道に出たところから東屋と左に真っ直ぐ延びる登山道を見る

 瀬戸岩方面に進むと、2週間前に見た宮標石があった。埋まっていて「界」以下の文字は読めない。次の棚山・瀬戸岩分岐にある「界五」も含めて、赤ペンキは塗られていない。

 誰もいない瀬戸岩に着いて重いザックを下ろす。昼食にしようと思ったが、目の前にある一段高い岩の上には行ったことがないのを思い出し、まずは空身でそこに行ってみることにする。その前に登山靴を脱いで軽い運動靴に履き替える。軽い靴と空身だとかなり身軽になり、小走りになってしまう。



ヒノキの枝が垂れる瀬戸岩

 曲がりくねったヒノキの大木のある岩に登ったところは、以前にザイルを垂らしてクライミングをした場所である。この先、さらに高い岩の上までは行ってなかったのだ。そしてその一番高いところに行く。眼下にはブッポーウォールのある「山びこの丘」や海老川がよく見えた。



瀬戸岩最高点からブッポーウォールを見下ろす



瀬戸岩最高点への途中にある岩

 ザックを置いた場所に戻り、「おにぎり手巻シーチキンマヨネーズ」(105円)、「手巻寿司いくらと紅鮭ご飯」(160円)、そして卵を食べる。ところがゆで卵だと思って買ったのは「半熟たまごトッピング用」(63円)だった。



閉鎖された棚山キャンプ場

 登山道を下り、藪に入った赤矢印地点に着く。ここは「界九」で宮標石は倒木の下にあることを再確認。さらに登山道を下り、また、「夫婦滝」を見る。そしてまた滝の下へ。登りのときに一旦はあきらめたものの、名残惜しいので、アイスバイルを1本出して、氷に刺してみる。水に濡れていても簡単には割れない。まあ、感触だけ確認できて良しとしよう。登って登れないことはないかもしれないが、ノーザイルでは危ないし、一人ではリードも大変。それに薄い氷ではリードは危ないし、トップロープのザイルを上から垂らすにしてもいい場所はないだろう。ピックを刺したら岩にぶつけそうだし、水に濡れてびしょびしょになる可能性も高い。それに靴も履き替えてしまっているし。いろいろと状況を頭の中で確認してしまうのが未練がましくて情けない。

 ゲート前に着くと、他の車は出発時とは違う車1台だった。時間もあるので、行ったことのない愛知県民の森の風呂に向かう。鳳来寺山パークウェイも確か無料になったはず。有料の頃は一度も通ったことはないと記憶している。行ってみると、ゲートも撤去されていた。帰宅後、調べてみると、2005年7月1日から無料になり、県道門谷豊岡線になったようです。ちなみに、途中から分岐して鳳来寺山の駐車場へ行くと、駐車場は有料なようです(普通車500円)。



棚山林道から見る高畑は意外に立派な山に見える



川売から高畑を見上げる



川売の「猿ヶ岩」

 見かけた植物
 ツガ(葉)、ホソバシャクナゲ(葉)、アカマツ(葉)、ミヤマシキミ(実)、ユズリハ(実)ツルリンドウ(葉)、ササsp、ヒノキ(葉)


 【棚山周辺が紹介されている本】

『東三河の山 宇連山・棚山・鳳来寺山』(東三河山ぽ会)2004年3月28日第1刷発行
  棚山北尾根ルートが紹介されています。

『増補改訂版 奥三河の滝 10万年の旅』(風媒社)1995年7月1日第1刷発行
  棚山の滝(夫婦滝)が紹介されています。
  amazon.co.jpで購入できます→奥三河の滝 10万年の旅

『マイカー登山ベスト30東海版』(七賢出版)1994年7月20日第1刷発行
  宇連山のページで川売から棚山高原経由のルートが紹介されています。夫婦滝の名称と写真も載っています。

『分県登山ガイド22 愛知県の山』(山と溪谷社)1995年9月25日初版第1刷
  宇連山のページで川売から棚山高原経由のルートが紹介されています。夫婦滝の名称と写真も載っています。

『こんなに楽しい愛知の130山』(風媒社)1999年10月8日第1刷
  川売から副川へのルートが紹介されています。

『東海自然歩道日帰りハイキング2奥三河−鈴鹿峠』(山と溪谷社)1996年4月20日初版第1刷発行
  瀬戸岩を含め東海自然歩道ルートの紹介があります。
  amazon.co.jpで購入できます→東海自然歩道―日帰りハイキング〈2〉奥三河‐鈴鹿峠

『ワンデルングガイド10愛知県の山』(岳洋社)平成4年6月13日2版発行
  川売からのルートが紹介されています。

『こんなに楽しい愛知の100山』(風媒社)1991年5月1日改訂第1刷
  川売からのルートが紹介されています。

『27登山・ハイキング 東海自然歩道2 秋葉山〜関ヶ原』(日地出版)1997年版
  棚山高原、瀬戸岩を含め東海自然歩道ルートが地図とともに紹介されています。

『名古屋周辺 続 山旅徹底ガイド 裏木曽/東濃/奥三河』(中日新聞本社)1996年3月6日発行
  瀬戸岩までの案内あり。概念図では三角点の標高と「棚山」の文字。

『名古屋からの山なみ 東山スカイタワー基点』(中日新聞本社)1991年6月1日発行
  宇連山のページで棚山キャンプ場についての記述があります。
  amazon.co.jpで購入できます→名古屋からの山なみ

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