ウバユリ 姥百合
Cardiocrinum cordatum (Thunb.) Makino
単子葉植物綱 ユリ目 ユリ科 ユリ亜科 ウバユリ属
 

花 渥美 滝頭公園 2009.7.11

 ウバユリの葉は大きく、春から目立ち、目にする機会も多いのですが、花は暑い季節の低地に咲くためか、そのような場所にはあまり足が向かず、意外に見る機会が少ないような気がします。

 林の中などの少し薄暗い場所に生え、また、花の色も純白でなく、緑がかった白色で、大きく花が開くのではなく筒状に控えめに開き、とても地味な感じがします。

 花は横向きに咲き、花が終わると上向きになります。花の時期は、花粉が雨に濡れないように横を向き、果実の時期は、種子がすぐ下にこぼれないように、上を向くのでしょう。種子は風が吹いたときに遠くに飛ばされます。

 『日本の野生植物 草本』I(平凡社)によると、分布は、宮城県・石川県以西の本州、四国、九州となっています。

 ウバユリ属で日本に自生するのはウバユリ1種のみで、他にウバユリの変種にあたるオオウバユリがあります。ウバユリの花は数個つきますが、オオウバユリは10〜20個つきます。以前、ウバユリは、他のユリと同じユリ属(Lilium)とされており、世界でも別属とすべきか議論があった中、牧野富太郎が、ウバユリ属(Cardiocrinum)として別属にすることを発表したとのことです。

 『春日村の薬草』(春日村役場)にも、ウバユリが紹介されていて、澱粉が豊富な鱗茎を解熱剤として利用することが書かれています。映画『北の零年』でも、アイヌの教えに従ってウバユリの根を掘るシーンがありました。ただし、北海道なので、正確にはオオウバユリの方でしょう。

 ササユリなどのユリ属の葉は線形〜披針形で花後も枯れないが、ウバユリ属の葉は卵状長楕円形で長い柄があり、花が終わると枯れます。この葉が枯れるのと、歯が無くなるのを掛けて、姥百合の和名がつけられたそうです。

 2023年9月9日 22:30〜22:55にNHK Eチャンネルで放送された「イモヅル式に学ぼう!NHKラーニング 「趣味の園芸 牧野富太郎の愛した草花」編の一部では、牧野植物同好会会長で宇都宮大学名誉教授の谷本丈夫氏の案内で高尾山6号路のウバユリが紹介されていました。太い茎をまっすぐ1mほどに伸ばすのが特徴で、それは、球根の発達が悪く、花が枯れるとほとんどの球根は枯れてしまうそうで、タネをたくさんつくるり、タネでの繁殖を重視しているから、風で運ばれやすいように背を高くしたのだというような解説がされていました。

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